バフェットとバークシャーは予言を書かない。予言は悪しき慣習であり、しばしばほかの企業経営者が年次報告書に化粧を施す原因ともなっている。
株価の予言をしない。意味無い。
CEOと取締役会の間には慣習的になれ合いの関係が存在するため、取締役会が上司的な役割を果たすことを期待できないことである。これらの主な、解決策として、経営陣のストックオプションを与えることが一つの優れた方法としてもてはやされる一方で、取締役会の機能の重要性も説かれているのである。取締役会の会長とCEOを別個にして機能を切り離すこと、監査や任命権、報酬決定に関する永続的な委員会の設定も、功を奏すであろうという。
SOX以前の手紙ですね。企業統治の向上を目指して法を常に改正し続ける。そして、日本もそれに追随して委員会等設置会社なるものがある。そこでこの話を思い出す。
沈黙 (新潮文庫) 遠藤 周作 新潮社 1981-10-19 |
遠藤周作 沈黙より
もう一つ注意しなければならないことは、トモギ村の連中もそうでしたがここの百姓たちも私にしきりに小さな十字架やメダイユや聖画を持っていないかとせがむことです。そうしたものは船の中にみなおいてきてしまったというと非常に悲しそうな顔をするのです。私は彼らのために自分の持っていたロザリオの一つ一つの粒をほぐしてやらねばならなかったのです。こうしたものを日本の信徒が崇敬するのは悪いことではありませんが、しかし何か変な不安が起こってきます。彼らは何かを間違っているのではないでしょうか。
なんのつながりがあるのか意味がわからないか? バードレの物質文明に一神教を布教することに対する漠とした不安。これは伏線だ。
日本における「コーポレート・ガバナンスの向上」とかけて、「キリスト教の布教活動」ととく。その心は?
「20年間、私は布教してきた」 フェレイラは感情のない声で同じ言葉を繰り返し続けた。「知ったことはただこの国にはお前や私たちの宗教は所詮、根を下ろさぬということだけだ」「根を下ろさぬのではありませぬ」司祭は首を振って大声で叫んだ。「根が切り取られたのです」
「この国者たちがあの頃信じたものは我々の神ではない。彼らの神々だった。それを私たちは長い長い間知らず、日本人が基督教徒になったと思い込んでいた」
「バードレは知るまいが、五島や生月にはいまだに切支丹の門徒宗と称する百姓どもがあまた残っておる。しかし奉行所ではもう捕える気もない」
「なぜでございます」と通辞が聞くと、
「あれはもはや根を絶たれておる。もし西方の国々からこのバードレのようなお方が、まだまだ来られるなら、我々も信徒たちを捕らえずばなるまいが…」と奉行は笑った。「しかし、その懸念もない。根が立たれれば茎も葉も腐るが道理。それが証拠に五島や生月の百姓たちがひそかに奉じておるデウスは切支丹のデウスとしだいに似ても似つかぬものになっておる。やがてバードレたちの運んだ切支丹は、その元から離れて得体のしれぬものとなっていこう。」
そして筑後守は胸の底から吐き出すようにため息を漏らした。
「日本とはこういう国だ。どうにもならん。なあ、バードレ」
ガバナンス向上とセットで「沈黙」を引用するこの笑いのセンス。かなり自信作なんだけど笑ってもらえた?